Bloom ─ブルーム─
この人は、簡単に私の心を掻き乱す。

反則だ。

その、柔軟剤の甘い香りも。

「けどさぁ、友里亜ちゃんこそ、あんなヤツで良かったのかなぁ。本当はあのナオト君って人の方が良かったんじゃないの?」

人の顔を覗き込んで、甘い香りで誘惑してるのかと思ったら、ほら別の話。

一瞬意識した自分が恥ずかしくなる。

「友里亜は……正直、私にも友里亜自身もわかんないんです」

「本人も?」

「はい。私も絶対あの日直人とうまくいくと思ってて。だからステージの上であんな事までしたのに……」

自分の勝手な行動で、みんなの歯車を狂わせてしまったのかもしれないなんて。

「私が、もしかしたら友里亜にとっての大切なものを壊してしまったのかも」

思い出すとまたブルーになる。

ぎゅるるるる。

体は正直で、心は沈んでるというのに、抜いた昼ご飯分早いお知らせが鳴り響いた。

「ぶはははっ。で、悩んで昼飯食べられなかったとか?」

「……はい」
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