Bloom ─ブルーム─
「とりあえず、これでしのぎなされ」

長谷川大樹はポケットからFRISKを取り出すと3粒私の手のひらに乗せた。

「里花ちゃんはさ、友里亜ちゃんにとってそんなすごい影響力を持ってるのかなぁ?」

影響力?

「そんなには、ないかと」

「じゃあ大丈夫じゃない?

里花ちゃんがしたのは、きっと小さなきっかけくらいで、最終的に決めるのは自分じゃん?

流されてるように見える人でも、人のせいにしてる人も、なんだかんだ言ったって最終的にイエスかノーか決めて歩き出したのは、他の誰でもなく自分なんだよ」

スッと肩の上に乗っていた荷物が軽くなったように感じた。

「里花ちゃんは、友達として友里亜ちゃんを想ってやった事でしょ?それならそれは間違いじゃないし、もしそれをきっかけに何かが壊れたなら、それまでのものだったって事なんじゃない?

もし壊したくない大切なものなら、きっと友里亜ちゃん自身が気づいてなんとかするよ」

それは言葉にされたら、確かにその通りで。

けど、そんな風に優しく諭すように話されたら

「……はい」

上昇する体温を抑えられなくなる。

今日1日苦しんだ私の悩みが、一瞬にして消えてしまった。


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