Bloom ─ブルーム─
後は信じるしかないさって、ニッと口を横に引く彼の顔が眩しくて、私は思わず目をそらした。

日が傾き始めてるはずなのに、さっきより暑い気がする。

私は握りしめたままでいたFRISKを口に放り込んだ。

「辛っ」

辛さと同時に、モヤモヤしてた頭の中の霧が晴れてくる。

「すごいしょ?これ、授業中の眠気覚ましに最高なんだよね。昼飯後の5時間目」

長谷川大樹は、さらにもうひとつのFRISKのケースを取り出すと

「俺の常備品なんだ。2つあるから、1こあげる」

眠気覚まし&悩ましい時&小腹が空いた時に食べなさい、と、今度は粒じゃなくてケースを私の手のひらに乗せた。

そこにも、2年3組長谷川大樹と記されてる。

「何か新調する度にいつの間にか書かれてるんだよね」

「ぷぷぷ」

「けどさ、落とす訳がわかったんだ。こっちの右ポケットに穴が開いてたんだよねー。で、もう直したから絶対落とさない!

忘れる癖を直せば、だけど」

あれ?そう言えば……。

「渡しそびれてた!先輩のボールペン屋上の階段のとこで拾ったんですよ」

私は制服のポケットに入れっぱなしだったボールペンを思い出した。
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