Bloom ─ブルーム─
差し出すと、不思議そうに首を傾げる彼。

「あれ。いつもポケットに入れてるヤツだ」

「学祭の日に見つけたんです」

「本当?ポケット直したの1ヵ月位前なんだけどなぁ。いつ落としたんだろ?」

ボールペンを受け取った彼は、右のポケットを確認し、今度は左のポケットに手を突っ込む。

「うあっ!開いてる!」

「穴?」

「うん」

ズボンの左側ポケットをひっくり返すと、穴に指を入れて見せてきた。

「そこから落ちたんですね。てか、穴開きすぎ」

「俺、鞄にしまうのめんどくさくて、すぐポケットに何でも突っ込んじゃうんだよね。だからかなぁ。

あーあ、また由紀ちゃんに直してもらわなきゃ」

ゆきちゃん?

彼女……?

「ゆき、ちゃん?」

「ん?うん。超可愛い素敵女子。あ、あそこが俺らのたまり場なんだ」

あっさり交わされたらしい。

あいつら待ってるよって、小走りになった彼はチャリが3台止まってるラーメン屋さんへ急ぐ。

けど、私は「ゆきちゃん」「可愛い」「素敵女子」という単語が頭から離れなくなってしまった。

面食いなんだ……。ふーん。
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