Bloom ─ブルーム─
水仕事?

「手……痛そうだったから」

あ、そうか。

さっき指先を見てたのはそのせいだったんだ。

「汚いですよね?結構肌弱くて、ハンドクリームつけてるけどすぐ荒れちゃうんです」

「普通に生活してるだけで荒れちゃうの?」

「んー。一応一通りの家事はするけど。

うち共働きで、上はお兄ちゃんだから、女の私がお母さんの分までいろいろやらなきゃダメなんです」

「ご飯支度とか?」

「まぁ。そんな上手くはないけど、一応。そしたら年中荒れっぱなしで、恥ずかしいです。へへ」

「ふーん。あ、ごめん。俺の母さんも、いっつも手荒れてたなーとか思い出しちゃって」

あれ?過去形?

「2年前に死んだんだけど」

何でもないよって感じにラーメン啜る彼。

そして、ああ、そう言えば、と思い出したようにまた話し出す。

「でも、あの人はめちゃくちゃ綺麗な指してて、ネイルアートとかやってる。あれ邪魔じゃないのかなぁ」

「あの人?」

私の質問に、彼は冷めた口調で答えた。

「新しい母親」

新しい母親?

「再婚したんですか?」

亡くなって2年しか経ってないのに?

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