Bloom ─ブルーム─
ナナちゃんっていう彼女でもいるのかな?

ナナと聞いて、急にシュンとなるギター。

「じゃあ、私も帰ります。えっと、ラーメン代……」

友里亜が帰るなら、本当に私がここにいる意味がなくなる。

みんながゾロゾロと暖簾をくぐり始めると、私も慌てて立ち上がり、財布を出した。

「お金はいーよ。俺ら顔パスだから」

「え?でも、」

私はただの知り合いレベルだし。顔でパスはできないと思う。

「大ちゃんのバイト代から差し引いとくから大丈夫よ。また来てね」

迷っていると、奥から顔を出した由紀ちゃんがニッコリ笑って答えた。

「バイト代?」

「うん、俺ら週3で5時からここでバイトしてるんだ」

「じゃあ、えっと長谷川先輩に払います。待って、細かいのが……」

財布の中身を覗いていると

「マジでいーから」

両手で私の頭を挟むようにつかみ、無理矢理ぐるッと回れ右させられ、歩かされる。

「んで、大樹でいーよ」

後ろから、私の頭を挟んだまま、私を押して歩く人。

この人を“大樹”と呼べだなんて、私の心臓の限界を知ってて言ってるんだろうか。

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