Bloom ─ブルーム─
「由紀ちゃん、チャリ借りるよー?」

長谷川大樹は、私のドキドキなんてまるで気づく気配もなく、由紀ちゃんに向かって大声を上げる。

「壊さないでよー」

「余裕!」

いや、あなたの自転車の壊れ具合ひどいから!そんな自信満々に言う事じゃないと思います。

って、私も人のこと言えないけど。

外に出ると、みんなもう自転車に跨がって走り出すところだった。

友里亜はまた山本先輩の後ろにちょこんと座ってサドルに掴まってる。

「あ、そうだ!花子見てく?裏にいるよ」

長谷川大樹はみんなを見送ると、私の返事も聞かずに裏庭の方へ歩き出した。

花子……見てみたいけど、勝手にいいのかな?

自分の家でもあるかのように、細い通路を横切って庭に入る彼。

仕方なく私もその後を続いた。

花子は“これぞ犬小屋”というベタな三角屋根の犬小屋に、“これぞ犬”という状態で眠っていた。

赤い首輪から辛うじてメスかなと思うくらいで、至ってフツーの柴犬なんですけど。

「やっぱ似てる!」

なのに、また私と見比べて笑ってる彼。

「似てません」

「いや、似てるって。顔もそうだけど、なんだろうなぁ。雰囲気?空気感?」

似てるのは嬉しくないけど、相談相手と空気感が似てると言われると悪い気はしない。

“お前といると落ち着くよ”って言われてるような。

それはいいように解釈しすぎかな。


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