Bloom ─ブルーム─
だって先輩の歌を聴いてるみんなの歓声はすごかったもん。

「上辺だけじゃなくて、先輩の中身も全部含めて、そこから出てくる声が、きっとみんなの心を動かすんだと思うんです。

悲しいことも辛いことも、きっとどこかに意味があって、それを乗り越えた先にはもっと魅力的な先輩がいるはずで。

だから、今の先輩のいる意味を否定しないで欲しい……」

あまりにも悲しそうに自分の立場を否定してるような目をするから。

つい、余計なことを口走ってしまった。

言い終えて、かなり図々しい事をしたと気づき後悔するけどもう遅い。

長谷川大樹は私を見たまま何も言わなかった。

「って、花子が言ってます」

私は咄嗟に、寝ている花子を指差した。

ごめん、花子。

「通訳できるの?」

「だてに同じ顔してませんよ」

もう開き直るしかない。

長谷川大樹は、ふっと吹き出したかと思うと

「ぶっはははは」

とお腹を抱えて笑い出した。

花子もビックリして目を覚まし、私達を不思議そうに眺めている。

笑って笑って、そして

「別に自分を否定してるつもりはないよ」

なつく花子を撫でながら彼は言った。

「否定も肯定もしない。けど、俺の存在の意味がたまにわかんなくなるんだ」

「なんて。詩人ぽいな俺」って笑って誤魔化した長谷川大樹は

「送るよ」

花子から離れて立ち上がった。

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