Bloom ─ブルーム─
余計なことをした。
怒ったかもしれない。
勝手に踏み込んで図々しいヤツって、お節介なヤツって思われたかも。
笑って誤魔化してたけど、表情が硬くなっていた気がした。
私は黙って長谷川大樹の後をついて行くしかできない。
彼は車庫に行くと、そこから由紀ちゃんのママチャリを出してきて、私に後ろに乗るように言った。
でも……。
「今日はバイトじゃないんですか?」
「バイトだけど、里花ちゃん送って戻れば間に合うから平気」
「私、定期あるしバスで帰れるからいいです」
これ以上余計なことをするわけにいかない。
「今日は、ありがとうございました!」
私は鞄を抱えると走り出そうとした。
けど、「ちょっと待った」と止める彼。
「今ここにいたら、絶対由紀ちゃんにタダ働きさせられるんだ。5時まで時間潰さないと損するから、送らせてよ」
二ッと笑う長谷川大樹は、穏やかな表情に戻っていた。
多分私が気にしてると感じて、言葉を探してくれたんだと思う。
本当は私が勇気づけてあげたかったのに。
これじゃ、反対だ。
「では……お願いします」
少し友里亜を見習っておとなしくしてよう。
私はおしとやかに長谷川大樹の後ろにちょこんと座ってみた。
走り出すと景色も髪もスカートも横に流れてく。
すぐそばには長谷川大樹の背中があって、さっきより薄れた柔軟剤の香りが鼻をくすぐっていた。