Bloom ─ブルーム─
「じゃ、行くよ?」
ちょっと待って。
こんなの、いくらFRISKで冷却しても、水の泡なんですけど。
しかも、咄嗟に『里花っ』って、呼び捨てされたことを今頃思い出した。
「さっきさ」
「は、はいぃっ」
突然の呼び掛けに驚いて、声が裏返ってしまった。
「さっき……ありがとね」
「え?」
さっき?とは、いつ頃のどの辺り?
「あんなに真っ直ぐ言われると照れ臭くて、なんて返していいかわかんなかったけど」
私が余計なことを言ってしまったこと?
「けど」の続きは隣を通りすぎるトラックがかき消してしまった。
でも、私の聞き取りが間違ってなければ多分「嬉しかったよ」と言ってたと思う。
聞き返すことはタブーな気がして、私は黙って横に流れて行く景色に意識を集中させた。
それでも、長谷川大樹に掴まる右手がじんわり汗ばむ。
彼の体温が直に手に伝わって、体も頭も心も、熱い。
「ところで」
「は、はい!」
しばらく自転車走らせてから、不意に彼は私に尋ねた。
「家……どこ?」
ちょっと待って。
こんなの、いくらFRISKで冷却しても、水の泡なんですけど。
しかも、咄嗟に『里花っ』って、呼び捨てされたことを今頃思い出した。
「さっきさ」
「は、はいぃっ」
突然の呼び掛けに驚いて、声が裏返ってしまった。
「さっき……ありがとね」
「え?」
さっき?とは、いつ頃のどの辺り?
「あんなに真っ直ぐ言われると照れ臭くて、なんて返していいかわかんなかったけど」
私が余計なことを言ってしまったこと?
「けど」の続きは隣を通りすぎるトラックがかき消してしまった。
でも、私の聞き取りが間違ってなければ多分「嬉しかったよ」と言ってたと思う。
聞き返すことはタブーな気がして、私は黙って横に流れて行く景色に意識を集中させた。
それでも、長谷川大樹に掴まる右手がじんわり汗ばむ。
彼の体温が直に手に伝わって、体も頭も心も、熱い。
「ところで」
「は、はい!」
しばらく自転車走らせてから、不意に彼は私に尋ねた。
「家……どこ?」