Bloom ─ブルーム─
昼休み。
トイレから教室に向かう途中。
開け放たれた窓から入り込む風が、私をひき止めた。
ぬるく柔らかいその風に乗って、彼の声が廊下まで入り込んできたんだ。
喉は彼にとって命なのに。
騒ぎすぎたのか、少し掠れてる。
気づくと、私は窓から見えるグラウンドのある一点に釘付けになっていた。
サッカーボールを追いかけ、子どもみたいに本気で走って転んで砂だらけになってるみんな。
まるで、スポーツドリンクのCM撮影でもしてるみたい。
太陽の下、輝く爽やかな汗と笑顔。
あの人達は学年性別問わず仲良くなれるんだろうか。よく見れば3年や1年も混じってる。
あの人達っていうのは、そう、バンドのメンバー。
足、速いじゃん。
あ、シュート──
決まった。
バカみたいにジャンプして叫んでる。
掠れてる声がさらに掠れる。
あ、転んだ。
笑ってる。
転んだのに。
「さっきから夢中で見てるけど、誰を見てるの?」
「え?えぇっ?」
いつからそこにいたんだろう?
突然の友里亜の声に必要以上に驚いてしまった。
「別に全っ然、長谷川大樹とか興味ないよ?なんとなく視線が向いてたってだけで、見てたわけじゃなくてっ」
「長谷川大樹先輩?」
友里亜が天然で良かった。
大丈夫、多分気づかれてない。
いや、気づかれてないも何も、別に何もないけど!
「あ、本当だ。遠くてわかんなかったけど、バンドの人達がいたんだ。山本先輩もいるかなぁ」
「うん、あれじゃない?ほら、今ボール奪った人」
「あー、そうかも。上手なんだね」
トイレから教室に向かう途中。
開け放たれた窓から入り込む風が、私をひき止めた。
ぬるく柔らかいその風に乗って、彼の声が廊下まで入り込んできたんだ。
喉は彼にとって命なのに。
騒ぎすぎたのか、少し掠れてる。
気づくと、私は窓から見えるグラウンドのある一点に釘付けになっていた。
サッカーボールを追いかけ、子どもみたいに本気で走って転んで砂だらけになってるみんな。
まるで、スポーツドリンクのCM撮影でもしてるみたい。
太陽の下、輝く爽やかな汗と笑顔。
あの人達は学年性別問わず仲良くなれるんだろうか。よく見れば3年や1年も混じってる。
あの人達っていうのは、そう、バンドのメンバー。
足、速いじゃん。
あ、シュート──
決まった。
バカみたいにジャンプして叫んでる。
掠れてる声がさらに掠れる。
あ、転んだ。
笑ってる。
転んだのに。
「さっきから夢中で見てるけど、誰を見てるの?」
「え?えぇっ?」
いつからそこにいたんだろう?
突然の友里亜の声に必要以上に驚いてしまった。
「別に全っ然、長谷川大樹とか興味ないよ?なんとなく視線が向いてたってだけで、見てたわけじゃなくてっ」
「長谷川大樹先輩?」
友里亜が天然で良かった。
大丈夫、多分気づかれてない。
いや、気づかれてないも何も、別に何もないけど!
「あ、本当だ。遠くてわかんなかったけど、バンドの人達がいたんだ。山本先輩もいるかなぁ」
「うん、あれじゃない?ほら、今ボール奪った人」
「あー、そうかも。上手なんだね」