MAGIC HIGH SCHOOL ~第二章 円形闘技場~
罠
遠くに何かが見える。石造りの建物のようだ。
“まさか…ね。あの夢が現実になるはずがない”
「陽梁、あそこ?」
「多分。ゆっくり近づいてみよう。見つからないように。何処から何が出てくるか分からないから」
私達はゆっくり近づいて行った。近づいてみると、かなり巨大な建物だと言う事が分かった。
歓声が聞こえる。
“この建物が円形じゃありませんように!”
私の祈りは通じなかった。建物は円形だった。この大きさ、歓声、そして形。それしか考えられない。
「コロッセオだ」
勘弁して!
「え?」
里依が訳がわからなそうだ。
「まさかあいつ……皆を戦わせて……急がないと! 皆が危ない!」
私達は、建物の周りを回った。すると、入口らしき物があった。けど、見張りがいる。魔界の生物が2人。
「どうしよう。他に入口があるとは思えないし、見張りの目をかわさないと……」
「私が行く」
と、里依が言った。
「だめよ。捕まっちゃう」
「クイーンは、陽梁の事は説明しても私の事はしなかったかもしれない。だから、私が見張りの気をひいてる間に忍び込んで」
「里依はどうするの?」
「どうにかするよ」
そう言って里依は歩いて行ってしまった。しょうがない。この方法にかけるしかない。
しかし、まだ私の中ではためらいがあった。何かよく分からないけど、底知れない不安。私は、里依の無事を祈り、見守る事しかできなかった。
〈里依視点〉
私は、魔界の生物に近づいた。見た所、なんとか話は通じる。
「えっと……ここで何が行われるんですか?」
「ん、見ての通りさ。闘うんだよ」
「誰と誰がですか?」
「いつもは魔界人同士だけど……今日は何だっけ? 人間同士が闘う……だっけ? とにかくかなりの来場数だよ。チケットも飛ぶように売れてくよ」
〈陽梁視点〉
“今のうちだよ! 陽梁!”
里依の声が聞こえた気がした。
“分かった”
私は武器庫で見つけた帽子をかぶり、透明になった。こういう時に役立つんだな。
私は里依の横を通り、入口に向かった。
“里依、話が終わったら至急帽子かぶって!”
私はそう念じた。