MAGIC HIGH SCHOOL ~第二章 円形闘技場~
キャストとすれ違い
私は複雑な通路を進んだ。
皆は上にいる。
階段を3つ上ったら、観客席についた。皆が観客席に? なんで?
私は帽子を取った。これだけ群衆がいれば、まず気がつかれないだろう。
〈黎夜視点〉
俺達は、客席で闘いを見ていたが、正直興味は全くない。何故クイーン達は、こんな残酷な見世物を楽しめるんだ? 俺は意味が分からなかった。
「渡飾」
大島が声を掛けて来た。
「あそこに……星月がいるぞ」
嘘だろ。
正直そう思った。が、大島の能力は千里眼。見間違う訳がない。
「どこだ?」
「あそこ。階段の近くだ」
「賢島はいるか?」
「いない。」
全く賢島は何をしてるんだ? しょうがない。
「俺がこっそり星月に会いに行く。奴らに気が付かれないようにしてくれ」
そう言って、俺は移動を始めた。
〈陽梁視点〉
全く。群衆に隠れられるのは良いけど、皆が何処にいるのかさっぱり分からない。おまけに観客の歓声のせいで耳が痛い。
その時、肩に手をかけられた。
私は反射的に動いた。さっと手を振り払い、鳩尾に拳を叩きこむ……寸前で止めた。
「黎夜! びっくりさせないでよ! 危うくノックアウトさせる所だったじゃない!」
「ごめんな」
あれ?黎夜の目がおかしい。いつもと違う。くもってる。
「皆は何処? クイーンは?」
〈里依視点〉
私は道に迷った。方向音痴が祟ったみたいだ。よし、こうなったらいったん戻ろう。
私は、今まで来た道をひたすら戻った。もちろん帽子はちゃんとかぶって。暫くすると、さっき魔界の生物と話をした所についた。2人ともいない。チャンス!
私は木陰に隠れ、ナイフを鞘から取り出し、わざと地面に強く落とした。途端に煙が上がり、剣が龍に変身する。
“里依。今日は何の用?”
“そこの闘技場までお願いできる? 私が合図をするから”
龍の扱いは初めてだけど、やるっきゃない。
“仰せのままに”
そう言うと、龍は、雄叫びを上げながら闘技場へとハイスピードで飛んだ。私は帽子を首で固定し、ブローチに触る。ヴェローネが現れた。
さっそく1発目。とにかく威嚇だ。龍の手綱を手に絡ませ、私は不慣れな弓矢を一生懸命扱った。下手だけど、何とか飛ぶ。
3発、4発と当った途端、龍が急降下しだした。
“えっ、どういう事?”
“僕にも分からない! ごめん、里依”
そう言われた瞬間、私は窒息のあまり、意識を失った。
〈陽梁視点〉
私は黎夜に連れられて、紀香の所に向かった。
紀香を倒す! 皆を助けるにはそれしかない!
「あそこだ」
黎夜が指さした先に、紀香がいた。
よーし。
私はアポロンを取り出した。ゆっくり紀香に近づく。紀香は見世物に夢中だ。
私は紀香にアポロンを突き付けた。
「刺されたくなきゃ言う事を聞きな」
「やっと来たのかい陽梁。いや、ルナだったね。待ちくたびれたよ」
私は完全に無視した。
「皆を解放しな。そうすれば命だけは助けてやる」
「あんたはバカだねぇ。私のマリオネットに気がつかないなんて」
紀香が指を鳴らした。
視界の隅で黎夜が動いた。
突然、頭の中で火花が散った。
〈紀香視点〉
陽梁が気絶した。私はマリオネットに命令した。
「下の牢に入れときな。後、あんた達は戦闘準備。陽梁が目を覚ましたらすぐやるからね」
マリオネット、つまり黎夜とやらが陽梁を運んで行った。