最期の奇跡。
「わ、わかった。」
光矢がバタバタと、里沙を運んでいった。
「私は、誰の子供なの?」
冷静になった希望が問いかけた。
そこに、ちょうど光矢が戻ってきた。
「父さん。教えてよ。」
大樹はふぅ~、と溜め息をつくとゆっくり話し始めた。
「希望のお母さんの名前は岡田 叶多、お父さんの名前は岡田 敬。
叶多と敬は死ぬ直前に籍を入れたんだよ。
亡くなったとき、二人は共に21歳という若さだった。」
全て話そう。
叶多と敬の物語を。
切ない恋の話を。
苦しんだ二人の話を。
生きたいと願った二人の話を。
この二人が最期に起こした奇跡を。
――――この二人の軌跡を。