弁護士先生と恋する事務員

 交差する想い


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お昼休み。


話し合いでどういう結論が出たのかわからないけれど、

どうやらここ数日、芹沢先生はうちの事務所で過ごすことになったらしい。



「光太郎、―――じゃなくて剣淵先生。ランチに行きましょ?」


芹沢先生が剣淵先生のデスクへ誘いに行く。



(今、確かに“光太郎”って呼び捨てにした…)



せっかく地味子から普通の女の子へとイメチェンしたはずの私は

頭からキノコが生えて来そうなほどジメジメしていた。



「ランチって言ってもな。このへんだと食堂か蕎麦屋かウナギ屋くらいしかねえぞ?」


「ウナギ!いいわねえ。今日は奮発して、スタミナつけちゃおうかな。」



(やだ、先生と一緒に行った場所なのに――)



「んじゃ、行くか。」



芹沢先生の言葉に、先生はあっさり頷いた。


(―――!)


私にとっては思い出の場所でも、先生にとっては単なるウナギ屋でしかないんだ。


つまらない事で嫉妬している自分が、なんだか情けない。


あーあ、告白どころかぼろぼろだ。


はあ…。



(お昼だけど、何にも食べたくないな)



今ならあの時の先生の気持ちがわかる。

どんなにスタミナがついたとしても、ウナギなんて食べられる気がしない。



(それなのに、あの時先生は無理してつきあってくれたよね。)



私の足は自然と、先生がパンダと二人でしょぼくれていた

あの小さな公園へと向かっていた。

 
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