弁護士先生と恋する事務員


コンビニ手前の路地奥にある小さな公園には、昼休みだというのに人っ子一人見当たらない。


たぶん一年を通してほとんど人が来ないんだろうなと思わせる、さびれ具合だ。



だけどごくたまに現れる、今日の私みたいに一人になりたい誰かのために

この公園はひっそりと存在しているのかもしれない。



…なんて感傷的な事を考えながら、あの日先生が座っていたベンチに座り、ぼんやりしていると。



「あれぇ、もう戦意喪失?」



近くの食堂で食事を終えた安城先生が、私を見つけて声をかけてきた。


「…おちょくりに来たなら、帰ってもらっていいですか。」


露骨にうんざりする私を無視して、安城先生は隣に座ってきた。


(―――う!?…居座る気?)


「予想以上に凹んでるじゃない。大丈夫?」


「大丈夫じゃないですよ。凹ませた張本人が何言ってるんですか。」


「ごめんごめん。伊藤さんからかうと面白くてつい、ね。」



安城先生はちっとも悪いと思っていないような口調でそう言った。



「こう見えても俺は伊藤さんと剣淵先生の事、応援してるんだぜ?」


「へえ、そりゃずいぶんとわかりにくい応援ですねー。」


もう上っ面だけでも平静を装っている余裕もなく、私は冷たくあしらった。


「なんだよ、先生の家まで送ったり、雑誌も選んでやったりしただろ?」


(あ……)


「そう言えばそうでした。あの時は安城先生が天使に見えましたっけ。」


「だろ?人って喉元過ぎればすぐ忘れるんだよなー。」


「す、すみません……」


いつのまにか、謝る立場にさせられてしまった。


「…芹沢先生が邪魔だよね?」


(え…)


安城先生の言葉にドキリとする。


「じゃ、邪魔だなんてそんな…」


「寝取ってやろうか?」


「――なっ…!?」


何て事を言うんだろう、この先生は。


口角を上げてニヤリと笑うその顔は、もはや悪魔にしか見えない。

 
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