弁護士先生と恋する事務員
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*
ピピピピ…
ピチュピチュピチュ……
どこかから、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
カーテンの隙間から細く差し込んだ朝日が
隣で眠る先生の髪の上に光の直線を描いている。
ここは―――
先生の家。
私は―――
ベッドの上……
タオルケットをずらしてチラリと確認すると
(は、裸っ…)
自分が下着さえもつけていない事に思わず赤面する。
(私、昨夜先生と―――)
少しずつ、記憶がよみがえってくる。
事務所で長いキスをした後、二人とも離れがたくなってしまって
先生の家でシャワーを浴びて、そのままベッドに入って、それから―――
先生は優しかったり、強引だったり
ひどく色っぽい声で愛の言葉を囁いたり
たくさんキスをしながら
もつれあって、絡まりあって
そしてようやく、一つになったんだ。
私の隣でうつぶせて眠る先生の
洗いざらしのやわらかな黒髪。
いつもは髪を上げているから
無防備に下ろしたままの姿は、あどけない少年みたい。
この人と結ばれたんだと思うと
じわじわと、幸せな気持ちが湧きあがってくる。
好きな人に愛されるって、こんなに嬉しい事なんだな。
私はしばらく先生の寝顔を堪能して、それから
(そうだ、朝ごはん)
先生を起こさない様にそっと起き上がり、ゆっくりとベッドから降りようとした時
「まだダメ」
急に伸びてきた先生の腕が私の腰に巻きついて
「起きるな。ここにいて」
腕を引っ張られてベッドに引き戻されてしまった。
「あ、起こしちゃいましたか?」
「うん、お前がいなくなる気配を感じた」
「ごめんなさい、朝ごはんの支度をしようと思って…」
「あとで」
先生はベッドに片肘をついて上半身だけ起き上がると
私の額に、チュッ、とキスをした。
「おはよう、詩織」
「おはようございます、先生…」
はらりと垂れた前髪の隙間から、長い睫毛に縁取られた瞳が優しく私を見つめている。
(やっぱり、前髪を下ろしていると若いなぁ…)
いつもと違う先生の顔が間近にあって、嫌でも心臓がドキドキしてしまう。
動揺する私なんておかまいなしに
先生は私の頬や、まぶたや、鼻先にキスを落していく。
「詩織、かわいい。」
満足そうにそう言って私の頭をなでたかと思うと
キスは唇から耳へと移り、ゆっくりと下がって首筋を這うような、煽情的なものに変わっていた。
「あ、先生待って…」
私の言葉なんて聞こえないかのように
先生は私の体のいたるところに吸いつくから
私は小さな声をたくさんあげてしまって
それから私たちはまた、重なった―――