弁護士先生と恋する事務員
その日も、晩ご飯を食べてから部屋にこもって宿題をしたり
友達に手紙を書いたりして時間を潰していた。
10時頃、ふと気付くとリビングから物音がしなくなっていた。
(珍しい、もう寝たのかな。)
ちょうどトイレにも行きたかったから、そっと部屋を抜け出して用を足し
洗面所で手を洗っていたら、ふと顔を上げると
―――目の前の鏡にアイツの顔が映っていた。
(~~~~っ!!!)
それはまさにホラー映画そのもので。
私は心臓が止まるんじゃないかっていうぐらい驚いて、声なんてまったく出せなかった。
「詩織ちゃん、部屋に鍵なんかかけちゃってさぁ。」
そいつの口調は明らかにいつもと違って、私は本気で身の危険が迫っている事を感じた。
「なに、俺の事、意識してるんじゃないの?最近の中学生はマセてるっていうからねぇ。」
(やだ、逃げなきゃ…)
そいつは狭い洗面所に入りこんできて、小動物を追い詰めるようにじりじりと距離を詰めてくる。
「ねえ、どうなの。詩織ちゃんももう経験しちゃってるんでしょ?」
洗面台と男の間に閉じ込められた私は絶体絶命で、額から冷たい汗を流しながらどうやって逃げればいいかを必死に考えていた。
その時、そいつは私の腕をすごい力で捕まえると、欲情しきった男の声で囁いた。
「俺とも、セックスしよう?」
「きゃ―――――――!!」
瞬時に全身が粟立って、やっと出せた声は超音波みたいな金切り声だった。
「うるさい、騒ぐなって」
「きゃ―――――――!!」
「きゃ―――――――!!」
「きゃ―――――――!!」
どうやって逃れたのか覚えてないけれど
私は恐怖のあまり、ありったけの力で男を振り切って
着の身着のまま玄関から飛び出していた。