弁護士先生と恋する事務員

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真夜中の、街はずれの道。

タクシーが黄色いライトを点しながら通り過ぎていく。



「大事な試験、受けられなくなっちゃったね…」


「ハハ、大丈夫だ。試験は次もある。」



私と母は、その人に丁寧にお礼を言った。

別れ際、笑顔が去って行くのが淋しくて

とっさに訪ねた。



「そうだ!名前!名前聞いてなかった!」


私はその人に駆け寄って名前を尋ねた。


「俺か?」


うん。私は頷いた。


「光太郎」


「こうたろう…」


薄もやで曇ったバーのガラス窓に、その人は人差し指で走り書きをした。



“剣淵光太郎”



「それが俺の名前だ」





光の名を持つその人は



抗う事すらできなかった私の闇の世界を



たった一瞬で、まぶしい光で満たしてくれたんだ――






*『うちのセンセイ』[10]うちのセンセイ/おしまい*

 ~エピローグへ~
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