弁護士先生と恋する事務員
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「そんなわけで、今晩事務所のキッチンで夕飯を作ろうと思うんです。
たいしたものは作れないですけど、もしよかったら一緒にどうですか?」
みんなが揃った朝九時前。
キッチンに調理道具を片づけた私は、一応事務所のメンバーにも声をかけた。
人に振る舞えるほどの腕はないけれど、事務所を使うのに先生にだけ手料理を作るのもなんだかおかしな話。
どうせ安城先生は断るだろうし(だって私の事が嫌いだろうから)、柴田さんだったら多少ヘタな料理でも笑って食べてくれそう。
そう思ったら
「あら残念ー。私子供たちのご飯支度しなくちゃいけないし、残るのは難しいかな。食べたかったー、詩織ちゃんの手料理!」
「そうですよね、柴田さん帰ったらお母さん業が待ってるんですもんね。また、機会があれば。」
私は安城先生にも声をかけた。
さっき見た光景が頭を離れなくて、緊張で声がかすれてしまった。
「あ、安城先生もお忙しいでしょうし、無理しなくていいので……」
(とにかく、一応声をかけたという事実さえあれば…)
「僕、ごちそうになりたいな。」
「あん?」
思いもよらぬ返事が返ってきて、思わず耳の遠くなったおばあちゃんみたいなポーズで聞き返してしまった。
「伊藤さんの手料理、僕もいただきます。」
皆がいる前での安城先生は、本当にキラキラと光の粉が飛びそうな
爽やかイケメンだった―――