弁護士先生と恋する事務員
それから先生は私の買い出しに付き合ってくれて
荷物まで持ってくれて

(いいですって言ったのに、土鍋や食材の費用全部を払ってくれて…)

商店街のおじちゃんやおばちゃんからは


「まあー、詩織ちゃんと先生、新婚さんみたいねえ。」


なんてからかわれて、照れくさくも楽しい時間を過ごした。


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午後七時。


柴田さんが帰った後、私は早速料理に取りかかった。

事務所の中は、喫茶店時代に使っていた間接照明をつけて
いい感じに仄暗く。
小さくつけたラジオから、心地よいリズムの洋楽が流れている。


今朝家から持ってきて冷蔵庫に冷やしておいた総菜をツマミにビールで先に始めてもらう。

きんぴらごぼうや冷ややっこ、茄子の味噌炒めといったありふれた惣菜なのに、二人ともうまいうまいと食べてくれる。


(なんだか嬉しいな。フライもがんばって作っちゃおう。)


土鍋もコトコト言いだした。

油がピチピチいい始めた鍋に、衣をつけたアジをジュウと入れた。


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イカのお造り。
きゅうりの酢の物。
アジのフライ、タルタルソースがけ。
野菜サラダ。
えだまめご飯。


メインと副菜が出そろった所で、私もテーブルを囲んでビールをいただく。


「それではあらためて、カンパーイ!」


三人の缶ビールがカチンとぶつかる。
室内のほの暗さやアルコールが、心も体もリラックスさせてくれる。


「詩織、どれもすごくウマい。」

「ほんとですか?」

「ほんと、美味しいよ、伊藤さん。」


二人とも喜んでくれて、バクバクと気持ちいいくらい食べてくれる。


(自分が作った料理を、こうやって誰かに食べてもらえるのって嬉しいな)


なんだかあったかい気持ちになって、思わず顔がほころんだ。
 
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