弁護士先生と恋する事務員
「こんちは~♪近くまで来たから差し入れ持ってきたよ~ん。」
ノックも無しに、勢いよくドアが開いて
金色の巻き髪に派手な色の爪をキラキラ光らせながら、ジュリアさんが入ってきた。
「ママこれ『orange』のシュークリームー。みんなで食べて♪」
「あら美味しそ。」
ママというのは柴田さんの事。
そう、この人は柴田さんの娘さんで、柴田樹理亜さん、24歳。
身長はすらりと高いけれど、それ以外は顔も性格も柴田さんにそっくりな、にぎやかで楽しいお姉さんだ。
「うわ、シオリん今日も地っ味!!でもそこがイイッ♪」
「ど、どうも…」
「コータローセンセー、お元気ぃ?」
「おージュリア。お前はいつも元気だなぁ。こっち来て俺の仕事手伝っていけよ。」
先生がちょいちょいとジュリアさんを手招きしたけれど
「ごめーん先生!ジュリ、王子のお手伝いに来たんだー。」
片手を顔の前にかざして、かわいくゴメンネポーズをとるジュリアさん。
「んだとぉ?ちょっと柴田さん、オタクの娘カンジ悪いよー。」
「がはは、ごめんごめん剣淵先生!うちの娘若いイケメンが好きなのよ~。」
「柴田さんもカンジ悪っ!」
やりあう先生と柴田さんの間をすり抜けて、ジュリアさんは安城先生にスススと近寄った。
「王子、ジュリお手伝いに来ました~♪」
ジュリアさんがかわいらしい声色を出して王子と呼ぶのは安城先生。
イケメンの安城先生に、もうかれこれ二年近く熱烈片思いをしているらしい。
「あ、ああ、ありがとうね。でも僕これから地裁に行かなくちゃいけないから…」
安城先生が笑顔でかわす。
「なんだあ、つまんなーい。ジュリもついて行こうかな。」
「ごめんね、それはちょっと。」
安城先生は大急ぎで資料をカバンの中に詰めると、
「地裁、行ってきます!」
ロケットみたいに、事務所を飛び出して行った。