弁護士先生と恋する事務員
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私の追跡調査は、約一週間で終わりを告げた。
もう、十分。
結論から言うと、安城祐介は『真っ黒』だった。
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一週間張り込みをしたうち、安城先生が女性と会っていたのは三日間。
どの日も違う女性で、そのうち二人は、やはり剣淵先生と仲良くしていた女の人だった。
残りの一人は知らないけれど、剣淵先生に関係する女性だという事は容易に想像できる。
(一体、何股かけているのやら!
それ以前に、剣淵先生の女性関係も多すぎだから!!)
両先生に腹は立つけれど、このまま放っておくわけにはいかない。
今日は勝負の日。
安城先生に、どうしてそんな事をするのか直接問い正してやる。
相手は弁護士先生だから、頭も切れるし口も達者だろうけど負けないぞ!
午後7時30分。
「それじゃ、お先に失礼します。」
いつものように安城先生が礼儀正しく会釈して事務所を出る。
よし、今だっ!
「わ、私も失礼しまーす!」
慌ててバッグを抱え、続いて事務所を出ようとした。
安城め~!今行くから待ってなさ………
―――あれ?
足が空回りしている事に気がついて、見上げると剣淵先生が私の首根っこを捕まえていた。
正確に言うと、ブラウスの襟首を持ちあげられている。
ちょ…何すんの先生? 私ネコじゃないんだから…
「な、何ですか?」
必死に首をまわして後ろに立っている剣淵先生を見上げる。
「ちょっと待て、詩織。」
え、ええー、待てない!ぐずぐずしてたら、ホシを逃がしちゃいますぜ(泣)
「詩織……」
剣淵先生はやっと私の首根っこをはなすと、くるりと私の体を回して先生と向き合う形にした。
「え… どうしたんですか、先生?」
先生はうっすらと笑っているけれど、作り笑顔のようにどこか固い。
「お前最近、安城の後追いかけまわしてるだろ?」
ドキッ!
安城先生を尾行している事、バレてる!?
思わず心臓が口から飛び出しそうになった。
先生は眉根を寄せ、苦く笑いながら言った。
「詩織……、お前安城の事、好きなのか」