弁護士先生と恋する事務員
はあ!?
思いもよらない質問をされて、私は反射的に答えてしまった。
「嫌いです!!」
「あ!?」
剣淵先生が怪訝な顔をして私を見つめるから、自分の失言に気がついた。
(しまった、本当に嫌いでも『嫌い』なんてはっきり言うのは社会人として失格…)
「う、嘘です嘘!好きですよっ。あの爽やか~な笑顔なんか特に…癒されますよね。あはは」
ちょっと言い過ぎただろうか。あの爽やかな笑顔の陰に潜む腹黒な素顔に戦慄を覚えます、が本当なんだけれど。
「と、とにかく、大丈夫です!私、がんばってくるんで、今日はこの辺で失礼しますっ!」
そう、とにかく今私は安城祐介を追っているのだ。
力強い笑顔を見せて、事務所を出ようとすると
「ああ~、ワケわかんねえ!」
先生はムシャクシャしたように、私の頭を大きな両手でぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
(んもう、先生ヒドイ…)
ボサボサになってしまったゆるふわボブを手ぐしで整えながら、
私は事務所を飛び出して安城先生を追いかけた。