弁護士先生と恋する事務員


「で、何。」


私の息が整うのを待って、安城先生が聞く。


「ここじゃちょっと…近くの公園にでも場所を移していただけますか?」

「……伊藤さん、あのさあ、僕まだ晩飯も食べてないんだけど。」

「すぐ済みますから、我慢してください!」

「………」


明らかにムッとした顔を無視して、私は公園のベンチへと誘導した。

砂場の前にある、ひんやりした木製のベンチに二人並んで座ると、一度深呼吸をしてから話し始めた。


「―――私、知ってます。剣淵先生が仲良くなった女の人を、安城先生が奪って付き合っている事を。」


「―――ふうん?」


(ふ、ふうん!?ふうんって何よ、ふうんって!)


「ど、どうして安城先生はそんな事をするんですか?うちのボス――、剣淵先生に悪いとは思わないんですか?」

「思わないよ。」


(“思わないよ”て!!!)


糠に釘をさすような返事に、私はだんだん苛立ち始めた。


「な、なんで?安城先生なら人の彼女にちょっかいかけなくてもいくらでもお付き合いできる子がいるでしょう?」

「まあ、そうだろうね。」

「だったらどうしてですか!?どうしてわざわざ剣淵先生を悲しませるような事をするんですかっ」

「どうしてだと思う?」


安城先生はあいかわらずニヤニヤしながら、のらりくらりと答えをはぐらかす。



(―――もう、あったまに来た!)



「私わかりますよ!あ、安城先生はあれですよ。


上司の彼女を寝取って優越感に浸るような


へ、ヘンタイ性癖の持ち主なんですよ!!」



……言った。とうとう言ってやった…


反論できるものなら、してごらんなさい、安城祐介!
 
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