弁護士先生と恋する事務員
「ぷっ……クックック……」
何!?
隣を見ると、安城先生がお腹を抱えて吹き出している。
「な!?何笑ってるんですか… 笑ってごまかそうったってそうは問屋が……」
「は~、面白い。ヘンタイ性癖ねえ。23の女のセリフかよ。」
まだ安城先生は笑っている。
(えっ… 違うの?もしかして私、とんでもなく恥ずかしい事言っちゃった!??)
カーッと頬が熱くなって、急に弱気になってきた。
「―――だいいち、俺寝取ってねえし。」
急に口調が変わった安城先生に、びくりと肩がすくむ。
「だいたい、ああいう奴らじゃ俺、勃たねえよ。クククッ…」
(勃た……って……出たな~、ブラック祐介!ついに本性をあらわした!)
「そ、それじゃあ先生の女友達を奪うような事、やめてください。先生がかわいそうだし、相手の女の人にも失礼です。」
「お前さ、ほんとにそう思ってんの?」
安城先生はそういうと、急に私の顎を掴み、ぐいっと顔を持ち上げた。
「や…やめ…」
「お前だってあわよくば先生と付き合いたいと思ってるくせに。他の女と付き合わなくて、ほんとはホッとしてるくせに。」
「なっ……!」
「お前みたいな奴をな、何て言うか知ってるか?」
安城祐介は私を睨みつけてこう言った。
「―――偽善者。俺、そういう奴、一番嫌いなんだよ。」
そんな捨て台詞を吐くと、もういいだろ、と言って安城先生は足早に帰って行った。
私は、一言も反論できずに―――
しばらくベンチから動けないでいる私を
夜の風が優しく包み込んでくれた。
*『うちのセンセイ』[3]腹黒新米弁護士の企み /おしまい*