弁護士先生と恋する事務員

 小娘悩み相談室



―――うー…頭痛い…


「柴田さん、コーヒーどうぞ~。」


朝の事務所には、いつものようにコーヒーの香ばしい匂いが立ち込めている。

私はその香りが大好きなんだけど、今朝はさすがにキツイ。


「ありがとう詩織ちゃん。…って、あらどうしたの、さえない顔して。」

「ああ、ちょっと…えへへ…剣淵先生どうぞ~。」

「サンキュ。詩織は二日酔いなんだよな。」


デスクで新聞をんでいた先生が、すかさずからかってくる。


「あらら、二日酔い?かわいそうに。何、先生と飲みに行ったの?」

「はい、そうなんです。ちょっと飲みすぎちゃいました。」

「フラフラで歩けねえし、しょうがねえから俺がおんぶして送ってってやったんだ。」

「あらセンセイ、送りオオカミにならなかったでしょうね?」

「俺は紳士だよ?柴田さん。」


白い歯を見せて、わははと笑う先生。今日も元気だなあ。

確かに、おんぶして家まで運んでベッドに寝かせてくれたんですもんね。間違いなく、紳士です!

っていうか、そんなへべれけの女の子見てもムラムラするどころかナエるよね。


「安城先生、どうぞ。」


安城先生の机にコトリ、とコーヒーカップを置くと


「……どうもありがとう。」


にっこり笑う安城先生。
もちろん、その笑顔の奥には冷た~い眼差しが見え隠れしている。


ええ、ええ、わかってます。
剣淵先生と飲みに行ったのが気にくわないんでしょ?

イケメン安城先生に誘惑されても釣られないし
そんな私の事が嫌いなんですよね~、はいはい、と。


―――あれ?


そういえば、そもそも安城先生って剣淵先生が嫌いなんだっけ?
普段の様子からみると、とてもそうとは思えないけど。

剣淵先生に女の子がまとわりつくのが嫌なわけ?


――――……そ、それってもしかして!?


突然、散りばめられた謎の点が線でつながった。

思わず目を見開いて安城先生を凝視していると


「お前今、俺の事ゲイだと思ったんだろ。」


私にしか聞こえないような小声で、安城先生が囁いた。


ギクッ!!


ブンブンブンブン、と頭を振って否定する。


「フン、残念ながら俺、ゲイじゃないから。」


な、なんだ…。ようやく謎が解けたと思ったのに。


二人にしかわからない火花をバチバチ散らしていると、剣淵先生に気づかれた。


「おーいそこ、事務所でイチャイチャするんじゃねー。」


不機嫌そうな声。

イチャイチャなんて、先生の目はフシアナですか!?


抗議してやろうと思ったら、事務所のドアが開いて朝一番のお客様が現れた。
 
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