弁護士先生と恋する事務員
センセイ、ダウンする
次の日も、その次の日も
事務所の中は蒸し暑く
空はどこまでも青かった。
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「ただいま。柴田さん昨日のファイルできてる?」
「できてますよー、はいこれ。」
「サンキュ。安城、新規の依頼主、明日の朝一で来るから、用意しとけよ。」
「わかりました。」
外回りから帰った途端、次々に指示を出す剣淵先生。
先生はいつにも増して仕事に打ち込んでいる。
そして、それ以外にも……
コンコン、カチャ…
「コウちゃんいるー?」
夕方事務所に来たのは先生の小中時代の同級生、雅美さん。
「どうした、雅美」
「この前はお世話になりましたー。これ、皆さんで食べて。」
雅美さんは柴田さんにスイカの入ったビニール袋を渡した。
「あの常連さんすごく喜んでね、会社の飲み会は必ずうちの店使ってくれるって。」
以前雅美さんから頼まれた、常連さんの金銭トラブルは
訴訟に持ち込む事なく、内容証明だけで解決することができたのだった。
「コウちゃんのおかげよ。本当にありがとうね。お礼と言ってはなんだけど、タダにするから飲みに来てよ。新しい子も入ったのよ。」
「おー、そうか。それじゃあ顔見に行かねえとな。」
「若くてかわいいわよ。コウちゃん気に入ると思うわ。」
「そうかそうか。それじゃあ今日でも見に行くか。」
(先生っ………)
私は思わずガタン、と椅子を鳴らして立ちあがった。
思いのほか大きな音がして、事務所中の視線を集めてしまった。
「お、どうした、詩織。」
「え、いえ…あのー……」
ここの所、仕事にも遊びにもハイペースな先生が
どうも無理をしている気がして気になっていたのだ。
今日だって時々、浅い呼吸を繰り返したり
額に手を当てて疲れた顔で俯くことがたびたびあった。
「先生、最近がんばりすぎて無理してるんじゃないかなあと思いまして。
今日も体調悪そうだし、わ、私がでしゃばってこんな事言える立場じゃないんですけど…
今日は家に帰ってゆっくりお休みになったらいかがかと…」