弁護士先生と恋する事務員
「あらコウちゃん、具合悪いの?どれどれ…」
雅美さんがおかあさんみたいな仕草で先生の額に手を当てた。
「わっ!?わわわ、すごい熱いじゃない!コウちゃん熱あるわよ。」
「えっ、どれどれ」
柴田さんも駆け寄って先生の額に手を当てた。
「あらヤダ、本当にすっごく熱いわ。先生、今すぐ帰って家で寝た方がいいわよ。」
「熱?そんなのねえよ、大丈夫だ。」
「ダメダメ、今日無理したって今後倒れられたら困ります!詩織ちゃん、今すぐタクシー呼んで。」
「わかりました!」
「だ、大丈夫だっつーの……」
こうして先生は、あれよあれよという間にタクシーに乗せられ、強制送還されたのだった。
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「だけどよく先生が体調悪いってわかったわよね。私はてっきり絶好調なんだと思ってたわ。さすが詩織ちゃんね。」
「い、いいえ、そんな…。」
いつも先生をじっくり観察しているから…とはストーカーっぽくて言えやしない。
慌ただしくタクシーに乗せちゃったけど、何も買わずに帰ったよね。
先生のうちにイオン飲料なんて…あるようには思えないし――
(差し入れぐらい、しに行きたいなあ。)
帰り際、事務所のキッチンでみんなのグラスを洗いながらそう思っていたら。
「先生の家、行った事ないんでしょ。俺今夜車で出かけるから、事務所で待ってな。乗っけて行ってあげる。」
後ろから安城先生がそんな声をかけてくれた。
(天使っ…!!)
安城先生が時々繰り出してくるスマッシュヒットは威力絶大!
うるうるした瞳で見つめているとまた無表情で
「ウザッ」
って言われたけれど、もう睨みつけたりなんかしない。
「ありがとうございますっ!!」
私はおでこが膝にぶつかる勢いで頭を下げ、商店街の薬屋へと駆けだした。