白紙撤回(仮
言葉を失い、顔面蒼白になっていく俺を見て市ヶ谷は不敵に笑った。

「……まあいいよ。取り合えず僕の意志はこれでわかってもらえたはずだ」

動けずにいる俺に市ヶ谷はそっと近寄り、とどめを刺すように耳元で囁く。

「次は君の番だ……」

ゾクリと一気に鳥肌が立つ。
心拍が速くなって息が震えた。

この場から走って逃げたいが動けない。

俺の番……

市ヶ谷は一体、俺に何をさせる気だ?

やはり殺人の罪を代わりに背負わされるんじゃ……いや、それはないと市ヶ谷はハッキリ言った。

殺人犯と死体……
死体……
市ヶ谷は死体を手元に置いて大切だと口にしていた。
死体愛好?

一瞬にして最悪なことが頭を過る。

まさか殺人の手伝い……

それか俺が市ヶ谷に殺されるんじゃ……


「山科君、何か朝飯買っていこうか?」

思考を遮るようなタイミング。
市ヶ谷の声で俺は我に返った。

視界から外れた市ヶ谷を振り返って探す。奴は呑気にパンを物色しはじめていた。

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