白紙撤回(仮
決心にどれくらい時間が経ったかわからない。
緊張で口の中がからからだ。
この部屋のドアを開ければ仮定が確信へと変わる。

もしもまだ部屋に死体があるのなら……

俺と死体を部屋に残して市ヶ谷がうまいこと警察に連絡すれば……

全て俺に罪を擦り付けるために市ヶ谷が仕組んだワナだとすれば……

幾つもの仮定。
考えても切りがない。

「……クッソまじ……」

ドアと対峙し大きく深呼吸した。
そうして息を止めて俺はドアノブに手をかけてゆっくりと回した。
心拍が上がりすぎて吐き気すらする。

回しきったドアノブに躊躇して、ゆっくりとドアを引いた。
隙間から部屋の光景が徐徐に明らかになっていく。
真っ先に奥のベッドが目につき俺はゾッとした。
ハッキリとはわからないが明らかにいる。
いや、ある。


死体だ……

死体がベッドに寝かされている……。

愕然としてドアの前で突っ立っている時だった。


「そんなに気になる?なら近くで見なよ」

背後から市ヶ谷の声がして俺は跳ね上がって振り向いた。
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