白紙撤回(仮
心臓が口から飛び出ると言う比喩よりも心臓を吐きそうになると言う感じだ。
驚きのあまり息すら止まった。

市ヶ谷、帰って来やがった!
物音なしに背後にいるとか、何だよ!?こえぇよ!?

慄く俺と対照的に市ヶ谷は俺を見てニコリと笑った。
爽やかな笑顔が逆に怖い。

「山科君も希美に興味があるの?顔は潰れちゃってるけど体はまだ綺麗だよ。見る?」

「いや!見なくていいから!」

「見ようとしてただろ?遠慮しなくてもいいよ」

「死体があるか確認しただけで見たいわけじゃない!いやマジで!」

「いいよ。見せてあげる……」

市ヶ谷は死体のある部屋に入ると俺の腕を取り、中に引っ張り込もうとした。
俺は腕を引いて拒否したがグイッと引き寄せられる。
咄嗟にドアを掴んだ。

「本当、マジ勘弁して!死体に興味とかないから!マジで無理!」

「大丈夫だよ。顔は潰れてるけど胸とか綺麗だよ?ムラッとしちゃうかもね」

「いやもうマジで無理!!死んでる時点で無理だから!!」

ドアを掴んでの俺の必死の抵抗に市ヶ谷も諦めたのかようやく手を緩めた。

死体を共用ってそう言う意味でか!?
マジで頭おかしいだろコイツ!?

色んな意味で驚愕していると市ヶ谷はため息をついた。

「……山科君さ、面白いんだけどそろそろ話を進めたいんだよね」

「……は?」

気を抜いて油断していた……。
一瞬の事、あっと言う間に俺は死体のある部屋に勢いよく引っ張られた。

咄嗟の抵抗も虚しく、市ヶ谷に死体のあるベッドに突き倒される。
鼻を掠める異臭に固いのか柔いのかわからない物体。

ソレに倒れ込むと鳥肌が一気に立ち、慌てて飛び起きた。
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