他人格的適合者(タジンカクテキテキゴウシャ)『短編』
撃った人を探す俺に、純一郎は笑いかけた。

「剣じいは、スナイパーです。そう簡単には、姿を…」

と説明していると、籠を提げ、ゴミを拾うよぼよぼの老人が、純一郎の横を通った。

「け、剣じい!」

純一郎は、目を丸くした。


当然、校門に自転車が入ってきた。

単なる生徒が、自転車で通学してきたのだ。

俺のそばを通り過ぎようとした刹那、

カルシウムが足りてない痩せっぽっちの剣じいの目が、光った。

振り返った時には、ライフルを構え……撃っていた。


「うわあ!」

自転車の前輪が外れ、生徒は転倒した。

それを確認すると、剣じいはその場から、いなくなっていた。


「お嬢様!ここは、危険です」

唖然とする俺を促して、
純一郎は校舎へと向かう。

「い、今のは…」

他人事ながら、何か納得できない俺に、純一郎は微笑みながら、

「危ないところでしたね」



俺は、理解した。

ここも異常なのだと。

< 15 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop