他人格的適合者(タジンカクテキテキゴウシャ)『短編』
(やられる!)

誰もが、そう確信しながら、授業は淡々と続く。

教師は、先程の狙撃がトラウマになったのか…黒板に書くのをやめ、口頭で話しだす。

「…であるからして、こ、この数式…!」

教師が噛んだ瞬間、教壇に穴が開いた。

多分、噛んだからだろう。

もう教師は、話すこともなくなり、

無言の時が進む。


(これじゃあ…授業ができない…)

俺は呆れ、純一郎に話し掛けようとした瞬間、


「あ、兄貴!」

針の落ちる音も聞こえるかもしれない静寂の教室に、

扉を破壊するかの如く、凄まじい音を立てて、1人の男が、教室に飛び込んできた。

「どうしたんじゃ!政!今は、授業中だぞ」

俺のそばに、控えていた純一郎が立ち上がった。

「そんな場合じゃありませんぜ」

高校生には見えない…額から頬に傷をつけた…あっち方面に見える男は、青ざめた顔を向け、

「学校に侵入者です!お嬢様のたまを、取りに乗り込んできました!」

「どこの学校だ!この辺りの目ぼしいとこは、潰したはずじゃ!」

政の報告に、切れる純一郎。

「学生じゃありやせん!殺し屋です!」

「なあに〜い!」

純一郎の眉が跳ね上がった。

その時、銃声が聞こえてきた。

教室から見えるグラウンドの向こう…塀に沿って植えられた木々の間で、火花が散っている。

「数は!」

純一郎の問いに、政は顔を上げ、

「確認できただけで…十人!目撃者によると、胸に黒猫のブローチが…」

「な、何い!?ニャンコの助け団だと!?馬鹿な!だ、誰が雇ったんだ!あいつは、金では、雇えないはずだ!」

「はっ!」

政は、頭を下げ、

「多分…雇い主は…」

純一郎と政の間だけに、緊張が走る。

俺は、ただ唖然としていた。


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