たなごころ―[Berry's版(改)]
「やっと来たな、猪俣笑実。ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ」
「手伝ってほしいこと?」
オウム返しに、箕浪の台詞を口にする笑実に。箕浪は眸を細めて、頷いた。
※※※※※※
わにぶちの2階にある、箕浪のプライベートルーム。そこにある浴室。ふたりが出会った当日。笑実が借りたそこに。ふたりは居た。浴室内のタイルの上には、幾重にも重ね広げた新聞紙。その上に椅子が置かれ、箕浪が腰掛けている。箕浪は頭から、大きなビニール袋をかぶり、まるでテルテル坊主にでもなったようないでたちで。
その彼の後ろに、鋏を持った笑実が。眉間に皺を寄せ、立っていた。
「……本当に、私が切るんですか?」
笑実の問いに、箕浪は眸を閉じたまま答える。
「猪俣笑実に切ってほしいんだよ」
「どうして急に?……いいんですか、切ってしまっても」
「いいんだ。それに、視野が広がれば、猪俣笑実。笑実の顔が今よりもっと良く見えるようになるだろう」
「手伝ってほしいこと?」
オウム返しに、箕浪の台詞を口にする笑実に。箕浪は眸を細めて、頷いた。
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わにぶちの2階にある、箕浪のプライベートルーム。そこにある浴室。ふたりが出会った当日。笑実が借りたそこに。ふたりは居た。浴室内のタイルの上には、幾重にも重ね広げた新聞紙。その上に椅子が置かれ、箕浪が腰掛けている。箕浪は頭から、大きなビニール袋をかぶり、まるでテルテル坊主にでもなったようないでたちで。
その彼の後ろに、鋏を持った笑実が。眉間に皺を寄せ、立っていた。
「……本当に、私が切るんですか?」
笑実の問いに、箕浪は眸を閉じたまま答える。
「猪俣笑実に切ってほしいんだよ」
「どうして急に?……いいんですか、切ってしまっても」
「いいんだ。それに、視野が広がれば、猪俣笑実。笑実の顔が今よりもっと良く見えるようになるだろう」