たなごころ―[Berry's版(改)]
――隣のシガーバーに、箕浪の目を盗み来てほしい。とのことだった。
何故、喜多がわにぶちへ顔を見せずに、笑実をシガーバーへ呼び出したのか。笑実には分からなかったが。逆らうことなく、笑実は箕浪が店内奥に居ることを確認し、こっそりと抜け出してきていた。
喜多と顔を合わせるのは、例の違約金の話をして以来でもあった。彼が、箕浪と笑実について。どこまで把握しているのかは分からないが。その話題に、喜多が触れることは一切なかった。笑実からもわざわざ話の矛先を向けるような真似はしない。
そして、予想もしなかった喜多からの話に。笑実はただただ、目を丸くしていた。
「そう。今週末の土曜日に。いや、大げさなものではないんだ。製薬会社が病院や取引先の関係者を招いて開く、ごく小さなものなんだけれどね」
「それに、私がですか?」
「そう。今回は、本社の会社役員としてではなくて、友人の紹介で出席するものだから。女性同伴じゃないとまずいって言われてしまって。頼める相手がいないんだ。急な話で申し訳ないんだけれど」
「喜多さんなら、喜んで同伴しそうな女性が大勢いそうですけれど」
何故、喜多がわにぶちへ顔を見せずに、笑実をシガーバーへ呼び出したのか。笑実には分からなかったが。逆らうことなく、笑実は箕浪が店内奥に居ることを確認し、こっそりと抜け出してきていた。
喜多と顔を合わせるのは、例の違約金の話をして以来でもあった。彼が、箕浪と笑実について。どこまで把握しているのかは分からないが。その話題に、喜多が触れることは一切なかった。笑実からもわざわざ話の矛先を向けるような真似はしない。
そして、予想もしなかった喜多からの話に。笑実はただただ、目を丸くしていた。
「そう。今週末の土曜日に。いや、大げさなものではないんだ。製薬会社が病院や取引先の関係者を招いて開く、ごく小さなものなんだけれどね」
「それに、私がですか?」
「そう。今回は、本社の会社役員としてではなくて、友人の紹介で出席するものだから。女性同伴じゃないとまずいって言われてしまって。頼める相手がいないんだ。急な話で申し訳ないんだけれど」
「喜多さんなら、喜んで同伴しそうな女性が大勢いそうですけれど」