たなごころ―[Berry's版(改)]
笑実の言葉に。喜多はテーブルに置かれたカップを手にし、喉を潤おしてから笑みを浮かべる。
「そういった女性が居ることは否定しないけれども、誤解も招きそうでね。後々が怖い」
だから、猪俣さんどうだろう?と問われ。笑実は思わず、小さく笑みを零す。全く、正反対のように見える箕浪と喜多ではあるが。女性に対し、どこか不器用な部分が見えるのは。やはり従兄弟同士と言ったところかもしれないと。
そして思案する。土曜日と言えば、まだ契約期間中でもある。『わにぶち』のアルバイトの一環と考えるのならば、承諾すべきことだろうが。内容をよくよく吟味すると、喜多の個人的頼みのようにも聞こえるからだ。そこまで考えていたところで、店の出入り口のドアを開閉する大きな音が、ふたりの耳に届く。続くのは、乱暴な靴音。その音はどんどんと大きく近くなり。笑実と喜多は反射的に、1階へ続く階段を注視していると。階段を駆け上ってきた箕浪が、姿を見せたのだった。
息を弾ませて、箕浪は笑実の隣に腰を下ろす。喜多の目の前にあったカップを、本人に断りもせず手に取り。一気に中身を飲み干す。突然のことに、笑実はただその様子を眺めていた。
「そういった女性が居ることは否定しないけれども、誤解も招きそうでね。後々が怖い」
だから、猪俣さんどうだろう?と問われ。笑実は思わず、小さく笑みを零す。全く、正反対のように見える箕浪と喜多ではあるが。女性に対し、どこか不器用な部分が見えるのは。やはり従兄弟同士と言ったところかもしれないと。
そして思案する。土曜日と言えば、まだ契約期間中でもある。『わにぶち』のアルバイトの一環と考えるのならば、承諾すべきことだろうが。内容をよくよく吟味すると、喜多の個人的頼みのようにも聞こえるからだ。そこまで考えていたところで、店の出入り口のドアを開閉する大きな音が、ふたりの耳に届く。続くのは、乱暴な靴音。その音はどんどんと大きく近くなり。笑実と喜多は反射的に、1階へ続く階段を注視していると。階段を駆け上ってきた箕浪が、姿を見せたのだった。
息を弾ませて、箕浪は笑実の隣に腰を下ろす。喜多の目の前にあったカップを、本人に断りもせず手に取り。一気に中身を飲み干す。突然のことに、笑実はただその様子を眺めていた。