たなごころ―[Berry's版(改)]
24.愛ある言葉
 笑実の髪に顔を埋めながら、背中で感じるのは。笑実の掌の感触。箕浪はこれ以上ないほど至福の時を味わっていた。頷くだけではなく、笑実からも抱きしめられていることで。箕浪は笑実の愛情を感じていたのだ。

 箕浪は今まで、誰かと深く関わることを極力避けて生きてきた。もちろん、仕事以外でだ。新しく人間関係を築く。それが、箕浪にとって恐怖でもあった。いずれ離れてしまうのなら、わにぶちの名前に振り回されるのなら。期待もせず、望まなければいい。箕浪はそう結論付け、人を遠ざけてきた。
 しかし、笑実を望んで、欲して、一歩を踏み出した。これ以上ないほどの覚悟を必要としたけれど。今、箕浪の胸の中には笑実が居る。
 込み上げる思いを、箕浪は必死で押さえ込もうと努力した。けれど……。早々に白旗を上げることになる。
 それは突然だった。

 予想外の箕浪の行動に、笑実は小さな悲鳴を上げた。さっきまで箕浪に抱きしめられていたはずが、気付けば掬い上げられていたからだ。初めて会ったあの日から。何度、笑実は箕浪に掬い上げられたか分からない。箕浪も、慣れたものである。慌てながらも、振り落とされぬよう、笑実は箕浪の首に腕を回す。その行動に、箕浪は嬉しそうに眸を細めた。
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