たなごころ―[Berry's版(改)]
「……だから『復讐』なんて名目で私に依頼を勧めたんですね。更には無償と言う形で」
「そうです」

 喜多の肯定の言葉を聞き、笑実は思わず唇を噛み締めていた。利用したわけでも、騙したわけでもないと言う箕浪を信じてはいたが。意図的に巻き込まれた可能性は残っていた。ある程度その覚悟はしていたものの、実際喜多の口から聞かされ、事実を知った今、気持ちが揺らいでいる。
 眉を下げた喜多が、言葉を続けた。

「箕浪は、反対していたんですよ。猪俣さんのアルバイトも、私の一存で進めたことでしたから。……もし、今回の件で。猪俣さんが謝罪を求めるのならば、誠心誠意答えたいと思っています。言いたいことがあるのなら、どんな言葉でも受け止めます。――ただ……」
「なんですか?」
「私からひとつ、言い訳をさせてもらえるのなら。猪俣さん。私はあの時、貴方を巻き込んだことを後悔してはいないんです。たとえ、卑怯者だと罵られても。今思えば、あの頃から、箕浪は貴方になにかしら感じるものがあったのかもしれないと思うんです。昔から、箕浪は捨てられている動物をよく拾ってきていたんですよ。人付き合いを避けているあいつが、動物の助けを求める眸だけは知らないふりを出来ないらしくて」
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