たなごころ―[Berry's版(改)]
「あ……だから、初めて私がここに来たときに『またヒロイモノか?』って言ったんですね」
「よく、覚えていますね。そうです。狐林学の件だけではなく。親身に貴方の傷の手当てをする箕浪の姿を前にして。このひとは、箕浪に何かしらの影響を与えるかもしれないと。そんな期待を、私は感じていたんです」
「期待……」
「あの時の予感は、間違いではなかった。今の箕浪を見ていて、私は断言できます……これは、彼の従兄弟として言わせていただきたい。彼を、箕浪を救ってくれて、ありがとうございました」

 喜多が深々と頭を下げる。笑実は慌てた。

「やめてください、救っただなんて。大げさな」
「貴方が来てから、箕浪は本当に変わりました。眸の輝きが違うと言うか。誰かを守るために、強くなろうと必死に頑張ってます。まあ、……時々、鼻につく傲慢な態度と我侭は変わりありませんけれどね」

 ふたりは、喜多の言葉に顔を合わせ笑みを浮かる。眸を細めたままに、真剣な口調で。喜多は言葉を続けた。

「猪俣さん。こんなお願いをするのは、重荷になるかもしれませんが……箕浪をよろしくお願いします」

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