たなごころ―[Berry's版(改)]
その手で、笑実の身体は箕浪の胸に引き寄せられる。ふたりの身体の間に、隙間が出来ないほどに、強く。それは強く。背中で感じる箕浪の体温が、肩に触れる掌が、酷く熱かった。笑実の体温も、一気に上昇する。
 胸元で交差する箕浪の腕に、笑実はそっと触れた。

「箕浪さん……」
「限界だ。もう、待てない」

 箕浪は、笑実の項に唇をひとつ落とした。ふるりと、笑実の身体が震えたことに気付き、箕浪の口角が自然と上がる。背後から抱きしめていた拘束を解き、笑実の身体を反転させる。真正面で彼女の唇を捕らえた箕浪は、笑実の唇を貪った。あまりの勢いに押された笑実の身体が、浴室の壁へぶつかりそうになるのだが。彼女が痛みを感じることはなかった。背後に回された箕浪の腕が、守るように、間にあったからだ。
 シャワーから流れる湯を、頭から浴びながら。ふたりの口付けが終わりを告げることはない。大きく口を開けた箕浪の唇が、笑実のそれを覆う。絡み合うふたりの舌。湯なのか、唾液なのか分からないものが、笑実の顎を伝っていた。
 互いに、角度を変えながら、自分のものではない唇や舌の感触に、ふたりは夢中になってゆく。肌を打つ水音にも負けないほどの、粘着性の高く、香り立つような音が。浴室内に響いていた。
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