たなごころ―[Berry's版(改)]
「箕浪さん、これ……」
「気に入らなかったか?」

 問いを問いで返され、笑実は首を横に振る。
 彼女が今、手にしているのは。真っ白なドレスだった。白いレースが贅沢に、これでもかと施され、つるりとした肌触りのよいロングドレス。それはまるで――。

 箕浪は立ち上がり、笑実の手を取り引き寄せる。今まで、自身が座っていた場所へ、笑実を落ち着かせると。床に膝を付き、笑実の顔を覗き込んだ。真剣な眸で。

「笑実」

 箕浪に握られている掌が、僅かに震えていた。いつもは、熱さを感じる箕浪の掌が冷たいことにも、笑実は気付く。恐らく、らしくなくも緊張しているのだろう。それだけ、箕浪が真剣だと言うことに。箕浪の想いが、言葉だけではなく、掌からも伝わってくるようで。笑実の眸に涙が浮かぶ。瞬きを繰り返し、それが零れ落ちないよう笑実は努力する。
 もう一方の手を重ね、箕浪は言葉を続けた。一度、小さな深呼吸をしてから。

「笑実。結婚しよう」

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