たなごころ―[Berry's版(改)]
「以前、箕浪さんに何かを作ってくれと言われたときに許可を貰いました。フレンチトーストを大層気に入ったみたいで。その後も何度かお願い……指示されて作るために。甘いものが好きだなんて、本当に子供ですよね」
不思議に感じながらも、経緯を話す笑実に。喜多は瞬きばかりを繰り返し、反応を示そうとしない。笑実は更に首を傾げるのだが。不意に、喜多は笑みを浮かべ、ひとり納得したように何度も頷き始めた。「そうか、そうか」と呟きながら。
「どうかしました?」
「いや、こっちのこと。うん、ありがとう」
腑に落ちない答えだけを残し、喜多は踵を返す。取り残された笑実も、仕方なくそれに続いた。事務所のソファーで転がっている箕浪の元へと。
ソファーへうつ伏せで横になっている箕浪の後頭部に、笑実は優しく即席の氷嚢を乗せた。恨めしげに視線だけを投げてくる彼に、笑実は小さく苦笑する。笑実の手から、その氷嚢を乱暴に奪い、箕浪は向かいに座る喜多へ問いかけた。
「どうしたんだ、こんな時間に喜多が店に来るなんて珍しい」
「うん、ちょっとな。……猪俣さん、来週の月曜日。お仕事お休みですよね?」
不思議に感じながらも、経緯を話す笑実に。喜多は瞬きばかりを繰り返し、反応を示そうとしない。笑実は更に首を傾げるのだが。不意に、喜多は笑みを浮かべ、ひとり納得したように何度も頷き始めた。「そうか、そうか」と呟きながら。
「どうかしました?」
「いや、こっちのこと。うん、ありがとう」
腑に落ちない答えだけを残し、喜多は踵を返す。取り残された笑実も、仕方なくそれに続いた。事務所のソファーで転がっている箕浪の元へと。
ソファーへうつ伏せで横になっている箕浪の後頭部に、笑実は優しく即席の氷嚢を乗せた。恨めしげに視線だけを投げてくる彼に、笑実は小さく苦笑する。笑実の手から、その氷嚢を乱暴に奪い、箕浪は向かいに座る喜多へ問いかけた。
「どうしたんだ、こんな時間に喜多が店に来るなんて珍しい」
「うん、ちょっとな。……猪俣さん、来週の月曜日。お仕事お休みですよね?」