たなごころ―[Berry's版(改)]
笑実の立てる靴音に気付き、喜多が顔を上げる。視界に笑実の姿を捉え、向かいの席を勧めた。言われるままに腰を下ろし、笑実は大きく息を吐き出した。
※※※※※※
箕浪が唐突に笑実の唇を奪った後。怒りに任せ箕浪へ襲い掛かろうとしていた笑実を、喜多が引き剥がした。安堵の表情を浮かべる箕浪へ、ひと睨みすることも忘れず。
笑実の肩に手を添え、動きを制限させた状態で。喜多は笑実に問いかける。
「猪俣さん、ここで会えたなら丁度良かった。今日は何時に仕事が終わるの?」
「……7時ですけれど」
「じゃ、その後で構わないから。俺にすこし付き合ってもらえないかな。例の件の報告もしたいんだ」
興奮は、未だに治まってはいなかったが。肩を大きく上下させ、深呼吸を一度してから。振り上げていた手を下ろし、笑実は自身の後ろに居る喜多を振り返った。眸で再度問いかけてくる喜多に。笑実は戸惑いながらも、首を縦に動かすことで承諾を示した。私からも、お話したいことがありますとの言葉も添えて。
慌てたように、自身も同席すると言い出した箕浪を制したのも。他でもない喜多であった。
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箕浪が唐突に笑実の唇を奪った後。怒りに任せ箕浪へ襲い掛かろうとしていた笑実を、喜多が引き剥がした。安堵の表情を浮かべる箕浪へ、ひと睨みすることも忘れず。
笑実の肩に手を添え、動きを制限させた状態で。喜多は笑実に問いかける。
「猪俣さん、ここで会えたなら丁度良かった。今日は何時に仕事が終わるの?」
「……7時ですけれど」
「じゃ、その後で構わないから。俺にすこし付き合ってもらえないかな。例の件の報告もしたいんだ」
興奮は、未だに治まってはいなかったが。肩を大きく上下させ、深呼吸を一度してから。振り上げていた手を下ろし、笑実は自身の後ろに居る喜多を振り返った。眸で再度問いかけてくる喜多に。笑実は戸惑いながらも、首を縦に動かすことで承諾を示した。私からも、お話したいことがありますとの言葉も添えて。
慌てたように、自身も同席すると言い出した箕浪を制したのも。他でもない喜多であった。