たなごころ―[Berry's版(改)]
「私、この調査を。中止して頂きたいんです。勝手言ってすみませんが。わにぶちのアルバイトもやめさせてください」
「……理由を聞いても?今の報告内容が、あまりにもショックだった?」
「そうですね……。ショックは受けました。でも、他にもいろいろです。上手く言えないんですが」
「もしかして。その理由の中に、箕浪のことも入っている?」
「箕浪さんや喜多さんと、住む世界があまりにも違いすぎると言うことは、理由としてあります。でも、それだけではなくて。調査報告の件も含めて。結局は、私に復讐すると言う意味で覚悟が足りなかったんです。無理です。これ以上は。すみません」

 笑実は、深く頭を下げる。その姿を前に、少しの逡巡の後。喜多は大きくため息をついてから言った。

「それなら、仕方ない。中止にしましょう。じゃ、違約金で70万。いつ用意できるかな?」

 喜多の言葉に、笑実の頭は真っ白になる。『違約金』とは何のことか。何を言っているのか。言葉は理解できているのだが、笑実には意味が分からなかった。
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