たなごころ―[Berry's版(改)]
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 わにぶちの閉店作業を終え、箕浪はプライベートルームにひとりいた。閉店後のこの時間。いつもなら、隣の事務所まで見通しよくされているはずのガラスの壁には。日中と同様にスクリーンが下ろされている。
 だらしなくソファーに座り。膝の上にはノートパソコンを載せて。ディスプレイには、笑実の写真が表示されていた。本人は、撮られていることに気付いていないだろうそれ。隣には、狐林学の姿が写るものもある。だが、箕浪の眸が捕らえているのは。笑実の顔だけだ。鋭い視線を向け、じとりと見つめる。

 突然。箕浪はノートパソコンを閉じた。床にそれを放り出し、胸を押さえる。
 笑実と抱きとめた時の様に。唇を合わせたときのように。ただ、写真を眺めていただけのはずなのだが。箕浪の心臓が、早鐘のように鳴っていたからだ。苦しいほどに。

「……おかしい。絶対におかしい。これは病気なのか?」

 箕浪の問いに、答えてくれる人は誰も居ない。


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