たなごころ―[Berry's版(改)]
少しだけ。呆れたように笑みを浮かべた笑実の手を離し、箕浪は姿勢を戻す。サングラスの位置を直してから、エンジンを掛けた。
「俺自身も正直、自分の行動に驚いたから。あの時は反射的に言葉が出てしまったけれど。でも、今は。猪俣笑実にキスしたことを、間違いや過ちだとは思っていない。あの行動自体に後悔も反省もない。ただ、猪俣笑実にとっては嫌なことだっただろうから。それを謝罪しろと言うのなら、何度でも謝るけれど」
いつになく、真剣な箕浪の言葉に。笑実は返す言葉に詰まる。視線を彷徨わせながら、言葉の奥に隠れる意味を探ろうと試みるが。笑実の本能的なものが、その思考にストップを掛けた。
笑実の姿を眺めながら。口元を綻ばせ、箕浪は再び問う。
「とにかく、今日は俺の気が済むように付き合え。これもアルバイトの一環だと思えばいいだろう?上司の命令だよ」
「それなら……」
「よし!」
ゆっくりと。車が走り出し、窓からの景色も流れ始める。
「俺自身も正直、自分の行動に驚いたから。あの時は反射的に言葉が出てしまったけれど。でも、今は。猪俣笑実にキスしたことを、間違いや過ちだとは思っていない。あの行動自体に後悔も反省もない。ただ、猪俣笑実にとっては嫌なことだっただろうから。それを謝罪しろと言うのなら、何度でも謝るけれど」
いつになく、真剣な箕浪の言葉に。笑実は返す言葉に詰まる。視線を彷徨わせながら、言葉の奥に隠れる意味を探ろうと試みるが。笑実の本能的なものが、その思考にストップを掛けた。
笑実の姿を眺めながら。口元を綻ばせ、箕浪は再び問う。
「とにかく、今日は俺の気が済むように付き合え。これもアルバイトの一環だと思えばいいだろう?上司の命令だよ」
「それなら……」
「よし!」
ゆっくりと。車が走り出し、窓からの景色も流れ始める。