男装少女の恋物語
「先輩、お願いがあるんだ。」
「なんだ?詫びになんでも聞いてやる。」
私は一息おいて言った。
「私が女っていうことは黙っててほしいんだ。」
「当たり前だ。黙ってる。」
先輩は頷いたあと、ふぅっと息を吐き出してこっちを向いた。
「お前、どうして男装なんかしてた?」
……痛いとこついてくるなぁ
「いや、言いたくないならいい。」
「うんにゃ、話すよ。隠しても今さらだし。」
私は大きく息を吸って言った。
「名前だよ。」
「名前?」
「そう。名前」
私は自虐的な笑みを浮かべていい放った。
「伊達政宗から取って付けられた名前なんだけどさ。やっぱり政宗って可愛くないから。小学生の頃とかよくからかわれたんだよねー」
「それで男装してたのか?」
「うん。そうだよ。やっぱり馬鹿らしいよね。まさか先輩もこんな男っぽい名前のせいで男装なんて思ってなかったっしょ?」
「あぁ、まぁな。まず、話していく中で政宗ってキャラじゃねーって思って、偽名なんじゃねーかとは思ったりもしたが……」
「ん?」
先輩はとびっきりの笑顔で言った。
「気が強くて、自分の意思がしっかりしてて、切れ者で。"政宗"って名前がお前以上に似合う
いねーよ!お俺が保証してやる!」
「……!」
涙が溢れた。
「お、おい。泣くなよ。そんなに嫌だったか?政宗が似合うって言われたこと。」
「ち、がう……。嬉しかったっ……!」
だって。
今まで、からかわれて来たのに。
この人は私に似合うって言ってくれた。
みんな男みたいって笑うのに。
この人は笑わなかった。
「先輩っ……!あり、がと……うっ」
「……あぁ」
先輩は優しく微笑んでくれた。