男装少女の恋物語

時は8月8日午前7時半。
上條先輩のお誘いを断ったことすら忘れ、のんびりと私は過ごしていた。
ちなみに、姉は毎朝ジョギングに行っているのでこの時間帯はいない。
というわけでテレビが占領できるのだ。


ピーンポーン


インターホンがなる。

(なんで、こんな時間に。新聞の勧誘?)

重い腰をあげてインターホンに出る。


「はい」


『おはよーございます。上條 一です。』
「…………」

見てない、知らない、聞いてない。
新聞の勧誘にしては爽やかだったなぁ……
あはははは……


ピーンポーン


「!?」


ピーンポーン


「……」


ピーンポーン


「うるっさいな!」
『あー、政宗おはよー』
「ちっ」
『旅行のこと、嘘なんだろー?て、ことで迎えに来たから、早く出てこい』
「嫌です、さよーなら」


ガチャッ



「ふぅ……、なんなんだアイツは。」


厄介なやつと出会ってしまったな、私は。
もう一度深く溜め息をついたとき。


「政宗ー?上條さんがいらしてるわよー?」
「うんうん。……ってはぁ!?」
「お邪魔しまーす」


え、ちょ、待ってよ!
私、今サラシも何も巻いてないのに!
と、とりあえず、二階に逃げよう!



「政宗ー?」
「……」


姉さん!
協力してくれるんじゃなかったの!?


「ごめんなさいね。上條さん。政宗まだ起きてないみたい。起こしてきてくれるかしら?私も準備したいの。あ、政宗の部屋は階段上ってすぐの部屋ね。」
「わかりましたー。」


トントントン……


階段上って来る音がする。
サラシ巻かなきゃ!

慌ててサラシを巻き、服を着る。

コンコン

「政宗、いるか?」

上條先輩の声。
間に合ったみたいだ。

「あぁ。」


部屋のなかを見られないように
素早や部屋の外へ出る。



「おはよーございます、上條先輩。」
「おはよーさん。」
「さっきは申し訳ないです。逃げました。」
「あー、気にしない気にしない。無理に押し掛けて悪かった。」



怒ってないみたいだ。
……よかった。
ん?よかった?
何がだ?
……まぁ、いいか。



「お前逃げるほど海が嫌なのかよ」



笑いかけてくる先輩。
この人の笑顔は好きだ。



「あぁ、嫌だね」



この人の笑顔になら
本気の笑顔で答えられる。



「じゃあ、先輩。僕はこれから準備するから。先輩は姉さんにコーヒーでも入れてもらって。」
「んー。」
「あ、姉さんに手を出さないでね、先輩。その時は万年発情期ヤローって呼ぶから。」
「ははっ、そりゃ参った。」



私のこの気持ちが
恋だと自覚するまでもう少し_____……






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