チューリップの記憶
彼の存在を知ったのは
2年生で同じクラスになってからの事。
出席番号で座っていた席は
すぐに室長の鶴の一声で席替えによって移動し
私と篠原君は一番後ろの席で隣同士になった。
内気で同じ部活の人としか話ができない私と
同級生問わず目上の人に対しても
適切な距離を置いて話ができる彼は真逆の人間で。
翔「南」
苗字を呼ばれた時には
本当にびっくりして
私は身体の芯から震え上がった。
翔「次の授業ってどっち取った?」
「あたし数学…」
翔「おっ!じゃあ一緒のクラスじゃん(笑)」
「う、うんっ」
初めて私だけに向けてくれた笑顔。
それがキラキラしていて
チャイムが鳴って授業が始まっても
私はノートを取るような真似をしながら
篠原君の真剣な顔を何度も盗み見していた。
…それを本人が気づいていたとも知らずに。